多汗症(手の汗)治療は山本クリニック 本文へジャンプ



代償性発汗とは ETSにより

胸・背中・腰・臀部・大腿・下肢など

脇より下方の体の汗が増える現象です



当院ではこれまで11000件以上のETS手術実施と

代償性発汗の手術治療の結果、

どのような手術が

「代償性発汗の防止・改善につながるのか」

について知識・経験と技術があります。

「強い代償性発汗はもう治らないのか?」

という質問をよくうけます。

治癒・改善は可能です。

しかしながら、再手術においても所定の手術を

行う必要があります。

代償性発汗は、

T4切除で軽減できるというような

簡単なものではありません。

以下の解説をよくお読みください。



最初に、代償性発汗の認識を正しく

把握するべきです。

少しからだの汗が増える位なら

問題はないのですが、

ETSの手術の仕方によっては、

相当多く汗がでる体になることがあり

多汗症の手術の副作用となっています。


ETSによって必ず生じるという医師もいますが、

そうではありません。

全く代償性発汗を感じなかったという人もいます。

今年の夏は猛暑であったことも影響し、

他院で両側同時の手術を受けた患者様からの

代償性発汗のお問い合わせが、非常に多くありました。

代償性発汗の治療は難しい場合があります。

理由としては、最初のETSにより、

胸膜肺癒着など再手術時のリスクが高くなり

困難あるいは出来ないという結果になります。

 初回手術を担当したその病院が

代償性発汗の治療に取り組んで

いないことが原因と考えられます。


 当院では、代償性発汗に対する配慮から、

初回手術では片側の手術を行っています。

これにより、著しい代償性発汗とならず、

両側同時手術と比較して程度が軽くすみます。




実際どのような手術が実施され、

どの部位の汗が増えてくるかを観察することで

反対側の治療の際に、

代償性発汗を軽減あるいは無くすことが出来ます。

当院では、過去多くの患者様の片側手術から

データベースを有しており、

これから、ETSを受ける方には有利な手術を提供できます。


 当院の過去の患者様の術後調査及び

両側同時の手術を受けた患者様の

代償性発汗の治療の経験と実績から

代償性発汗に対して積極的な

対策を行っています。

実績として

2009年8月から2010年9月までに

当院で手術を受けた患者様(682例)

の術後3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月間の

術後アンケートでは

代償性発汗が強く現れたために

再びこの手術は受けないと回答された患者様は

ありませんでした。

すなわち、2010年の猛暑を

経過した時点で

手術を後悔するほどの代償性発汗

にはならずにすんだということになります。



しかしながら、現時点でも手術における

代償性発汗の発生のリスクは

0%とは考えていません。

胸膜肺癒着や胸腔内の奇形や血管の走行異常

などの要因で所定の手術ができない場合がない

とは言えないからです



(当院の治療の進め方と異なる

他施設の患者様のお問い合わせについては

件数が余りに多く対応いたしかねますので

ご遠慮ください。特にT4手術を受けた患者様の問い合わせが多く

なっており、手術を受けた病院でご相談ください。)



代償性発汗に対する留意点


ETSで手術する交感神経の部位に関係しています。

したがって、代償性発汗にすでに困っている人でも

切除設定を見直すことにより改善できるといえます。

「代償性発汗は一度そうなったらどうすることもできない。」

というのではありません。

代償性発汗はETS術後に胸や背中から腹・腰・臀部・大腿
に多くの汗が出る状態となります。
そのメカニズムは、通常の汗が出る仕組みと同じく、
汗腺に交感神経から発汗信号が届けられた結果発汗しています。
代償性発汗も同じく、汗の多い皮膚の汗腺が
術前よりより多くの発汗信号が届けられたため
発汗量が多くなっています。

ではなぜ、ETS前には発汗量がそれほど多くなかった皮膚に
交感神経から発汗信号が来るようになったのでしょうか?
とにかく発汗が多い代償性発汗が出ている汗腺には
交感神経が活発に発汗信号を運んでいるわけです。

主に二つの理由があります。

1. 本来手や顔に発汗信号が多く届けていた交感神経が、
適切なETSが出来ずに、活発に発汗信号を発信する交感神経が
遺残し他の皮膚に繋がっている交感神経に刺激し発汗信号を
増大させている。

2. 本来手や顔に発汗信号が多く届けていた交感神経が、
ETSで十分に切除され除去されたが、
同時に他の皮膚に繋がっている交感神経のネットワークの
節前神経を切断した結果、節後繊維が健常なまま、
上位からの信号が来ない結果、
他の神経(運動神経や感覚神経と発汗信号ではないその他の機能を持つ交感神経)からの刺激を受けて反応する。この現象はpostdenervetic hyperstimulationと呼ばれています。神経一般にみられる現象です。

どちらの場合にも最終的に汗腺に入る交感神経の活動が

亢進しています。この交感神経がどの部分を走行しているか
が分かればその神経の遮断で、代償性発汗の部位の皮膚の
多汗は治まります。

この亢進している交感神経の部位を明らかにするのが
交感神経に対する電気刺激試験です。
ETS後であっても交感神経を微弱な電気刺激を行うと
その支配下の皮膚の血液循環量が減少します。
代償性発汗の部位と関係する交感神経の場所を把握し
適切な交感神経の遮断が可能となります。
その結果、代償性発汗は治まります。
二次元的な処理はLSFG(Lazerdoppler speckle graphy)でも
行うこともできます。

Hidehiro Yamamoto. The observation of body surface circulatory dynamics using LASER Speckle Flow Meter in the thoracic sympathectomy. Jpn. J. Laser. Surg. Med.,35(2) :180-186,2014.

どの交感神経を手術するとどの部分の皮膚の交感神経活動に
影響を与えるかを手術中に把握ししなければなりません。

この技術が術後の代償性発汗の治療の成果を決定します。
さらにこの技術は初回のETSにも応用でき、
代償性発汗を抑えることが出来ます。

代償性発汗は初回ETSで適切ではない交感神経の手術を
受けた結果であると言えるわけです。
したがって、T4切除で代償性発汗が抑えられるわけではありません。

切除箇所が少ないことも代償性発汗の原因となります。
上記理由の1番がそれを説明しています。

ETSは、多汗症を起こしている原因となる交感神経を選択し、
適切な手術が行われなくては、副作用が生じます。


これからETSの手術を受けようとする人は

代償性発汗についてよく理解してから

ETSを受ける必要があります。

代償性発汗の範囲は上述の通りですが、

その程度はさまざまで、

他人から見れば大した汗ではなくても

当人はすごく嫌がっている場合もあれば、

その逆もあります。


また、手や脇の汗がETSで減少した分だけ

代償性発汗になるというではありません。

(一部の医療施設のホームページに

記述されていますが、そのようなものでもありません。)

要するに、

代償性発汗は、術前の汗の量に関係していません。

多汗症の汗が多くても、術後

代償性発汗は全く無かった人も

いれば、その反対の人もいます。


代償性発汗の程度というのは、

その人なりに感じる程度に違いがあり

「どの程度汗が増えればどの程度嫌に思うか?」

ということはなかなかETSの前にはわからないものです。



よくETSの前に患者様から質問がされました。

「代償性発汗とはどの程度の汗がでるのですか?」


このため代償性発汗で困っている患者さまの

汗の量を測定してきましたが、

過去当院で最大値を示したのは

背中の中央部が最大で3.3mg/cm2/minでした。

この量は、通常の人でも夏の暑い日に

背中にでることは特に珍しくありません。


したがって、代償性発汗により

汗が何倍にも何十倍にも勢いが強くなるようなことを

ネット上に書き込む人がいますが、

それも正しくありません。


むしろ、代償性発汗は発汗の勢いに限るものではなく

発汗が始まるタイミングや一日の回数などが増えるため

日常生活に支障が生じると理解する必要があります。

気温が25度くらいでも汗が出始めたり、

一日何度も着替えをすることになると

大変となることは明らかです。


一方、元々の手の多汗症や顔・脇の多汗も

日常生活を害します。

ETSの手術が患者様の生活の改善になるためには、

ETSを両側同時に行うのではなく、

まず片側を受け体に現れる利益・不利益を

よく見極めることが大切となります。



当院では、ETSの手術中に交感神経に対して

電気刺激試験を行ってきました。

最近では二次元のLASER DOPPLER FLOWGRAPHY

の技術を導入し

術後の代償性発汗と照らし合わせてきました。


当院では最初の手術ではT3・4・5などの切除を行う際に

代償性発汗を呼び出す可能性の高い

交感神経レベルは手術しないようにします。

一回目の術後の代償性発汗の部位と程度に基づいて

二回目の手術はさらに代償性発汗を呼び出さないように取り組みます。

現在では一万件以上の手術経験から

初回手術での代償性発汗の発生頻度も大きく改善しました。

患者様が感じられる汗の

多いあるいは少ないの評価も

さまざまですので患者様に

必ず100%満足していただけるとは言えないのですが、

一律に、T4切除やT3切除など、

一律の手術で得られる成績とは

異なります。

当院でも、以前は一律の治療の成績を検証したことがありますが

明らかに患者様の個体差の方が幅広いものがあり、

全体の成績はよくありません。


この様に当院では手術を進めますが、

多汗症の手術治療では

患者さまも代償性発汗という副作用のリスクを常に念頭に入れて

患者様と主治医がともに良い治療となるよう取り組む

必要があります。



当院では、代償性発汗の病態解明を進め、

すでにリバーサル手術において代償性発汗の

治癒・改善を実証しています。

ETSを受けるのであれば、

代償性発汗に取り組む

知識・経験・技術のある

治療施設の選択が必要です。












これからETSを受ける患者さまへ

ETSでは代償性発汗という良くない作用があり、手術の仕方によっては出るときは激しい場合があります。

当院では代償性発汗の治療を行なうことが出来るようになった現段階の技術力であっても

初回治療で全くに代償性発汗がでない治療は出来ておりません。

この点に関しては代償性発汗があった場合に、

患者様としてどの程度から不満足になるかが術前に想定できないためです。

下方遮断T4以下の遮断で代償性発汗が無視できるとする医師もいますが、効果も乏しい上に

代償性発汗がでるときには出ます。

T4でうければ副作用はないと安直に考えてはいけません。

クリップ術などのようにクリップをはずせば、元に戻るというものではありません。


手術を受けるときには代償性発汗もあり得るということを考えに入れて

それでも多汗症の治療の有用性・必要性があるかどうかの検討をしてください。

多汗症の治療を受ける際には、代償性発汗に対する治療の実績をしらべることも肝要です。


今後の展望

現在、代償性発汗にクリップ術が有効としている医師がいますが、

単にクリップの除去では代償性発汗の多くは解決しません。

クリップ除去術を受けてさえ治まらなかった患者さまに対して

当院の手術の有効性をしめせるか検討します。











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2006年10月11日 21:37:11 掲載開始
2013年11月17日 更新